「Japan Food Town」はシンガポール中心地の目抜き通り沿いにオープンした。単なる日本食レストランへの場所貸しではない。食材調達から人材教育などに至るまでを運営会社が一元的に実施することで、各社が単独で海外出店するよりずっとリスクとコストを低減できるプラットフォームである。この仕組を利用して、今回12テナントが海外初出店、また松阪牛や金芽米(注1)、近大マグロ(注2)などの日本産食材が海外初輸出を果たした。「Japan Food Town」は日本の「食」における新たな挑戦が詰まった場所なのだ。
- Q.
- オープンから2ヵ月半が経ちますが、今の心境はいかがですか。
- 吉川
- まだまだ落ち着くには時間がかかりますね。私たちは単に場所を貸すことが仕事ではなく、食材調達から、物流、店舗運営、賃料支払、ブランディング、人材教育などに至るまでを一括して行っているため、自身が一つのレストランを運営しているようなもの。オープン後もずっと走りながら改善し続けている感じです。また、クールジャパン機構が出資していることもあり、お客様からの期待も当初からかなり高いものがあります。正直、まだその期待に応えきれていないところも一部ありますが、これからが本当の勝負だと考えています。
元々私たちの目的は単独では海外進出が難しい外食企業をサポートすること。最初から完璧ならば私たちは必要ありません。私たちの真価が問われるのはまさにこれから。これまで多くの日系外食企業が個別に海外出店しては数年で閉店を余儀なくされてきた歴史の中で、私たちはいかに長く続けて、テナントとともに成長していけるかだと思います。
注1)金芽米:東洋ライス株式会社が製造販売する、新しい精米方法による栄養価の
高い米
注2)近大マグロ:近畿大学が完全養殖に成功したマグロ
- Q.
- オープンまではどのようなことに苦労しましたか。
- 吉川
- 16テナントが集まれば16種類の考え方や能力がある。それぞれに応じたサポートが必要なのがとても大変でしたね。逆に16テナントも集まったからこそできることもあります。例えば調達面で言えば、松阪牛。「Japan Food Town」で一頭買いし、様々な部位を16テナントで余すことなく使い分けることで、コストを下げることができた。結果的に日本で食べるより安かったくらいです。
お客様にとっては見えにくいことかもしれませんが、これからどう効率良く食材を仕入れて、各テナントのメニューに分散し、良いものを安く提供していくか。16テナントが集まれば16種類の知恵がある。その強みを最大限に発揮していきたいと思っています。
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