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四季ある日本の豊かな食文化をシンガポールへ

一般社団法人 日本外食ベンチャー海外展開推進協会(JAOF)

PROLOGUE

日本食ブームと言われて久しい今、日本食は海外の人々にどのように伝わっているのだろうか。2016年7月16日、日本食や日本産食材をシンガポール、そしてアジアの人々へ発信する「Japan Food Town」がオープン。寿司、ラーメン、焼き肉、しゃぶしゃぶ、定食、居酒屋―、いわゆる大衆日本食の分野で腕が自慢の16テナントの精鋭たちが軒を連ねる。その仕掛人となったのが一般社団法人日本外食ベンチャー海外展開推進協会(JAOF)代表の吉川誠人氏だ。3年かけて実現したこのプロジェクトを通して吉川氏が世界に伝えたい日本食とは。

(※掲載されている情報は取材時点(2016年10月)。敬称略)


PROFILE

一般社団法人 日本外食ベンチャー海外展開推進協会(JAOF)
代表理事
吉川 誠人Makoto Yoshikawa

1977年生まれ。立命館大学法学部卒業後、信用金庫や飲食業向けコンサルティング会社などを経て、2004年に飲食店経営の株式会社ワイズフードシステムを設立、代表取締役社長就任。2013年、一般社団法人日本外食ベンチャー海外展開推進協会設立、代表理事就任(現職)。

chapter1 16テナントが集まった強みを最大限に発揮する
「Japan Food Town」はシンガポール中心地の目抜き通り沿いにオープンした。単なる日本食レストランへの場所貸しではない。食材調達から人材教育などに至るまでを運営会社が一元的に実施することで、各社が単独で海外出店するよりずっとリスクとコストを低減できるプラットフォームである。この仕組を利用して、今回12テナントが海外初出店、また松阪牛や金芽米(注1)、近大マグロ(注2)などの日本産食材が海外初輸出を果たした。「Japan Food Town」は日本の「食」における新たな挑戦が詰まった場所なのだ。
Q.
オープンから2ヵ月半が経ちますが、今の心境はいかがですか。
吉川
まだまだ落ち着くには時間がかかりますね。私たちは単に場所を貸すことが仕事ではなく、食材調達から、物流、店舗運営、賃料支払、ブランディング、人材教育などに至るまでを一括して行っているため、自身が一つのレストランを運営しているようなもの。オープン後もずっと走りながら改善し続けている感じです。また、クールジャパン機構が出資していることもあり、お客様からの期待も当初からかなり高いものがあります。正直、まだその期待に応えきれていないところも一部ありますが、これからが本当の勝負だと考えています。

元々私たちの目的は単独では海外進出が難しい外食企業をサポートすること。最初から完璧ならば私たちは必要ありません。私たちの真価が問われるのはまさにこれから。これまで多くの日系外食企業が個別に海外出店しては数年で閉店を余儀なくされてきた歴史の中で、私たちはいかに長く続けて、テナントとともに成長していけるかだと思います。

注1)金芽米:東洋ライス株式会社が製造販売する、新しい精米方法による栄養価の
   高い米
注2)近大マグロ:近畿大学が完全養殖に成功したマグロ

Q.
オープンまではどのようなことに苦労しましたか。
吉川
16テナントが集まれば16種類の考え方や能力がある。それぞれに応じたサポートが必要なのがとても大変でしたね。逆に16テナントも集まったからこそできることもあります。例えば調達面で言えば、松阪牛。「Japan Food Town」で一頭買いし、様々な部位を16テナントで余すことなく使い分けることで、コストを下げることができた。結果的に日本で食べるより安かったくらいです。

お客様にとっては見えにくいことかもしれませんが、これからどう効率良く食材を仕入れて、各テナントのメニューに分散し、良いものを安く提供していくか。16テナントが集まれば16種類の知恵がある。その強みを最大限に発揮していきたいと思っています。
Discover japan paris PLAY

「シンガポール伊勢丹」オーチャード店4階にオープン

Discover japan parisの外観

オープン初日から大盛況

Maison WAの外観

Q.
「Japan Food Town」を立ち上げた背景は何だったのでしょうか。
吉川
2012年頃、シンガポールにラーメン店と日本食店を開業したのですが、始めてすぐに、手軽で美味しい日本食が海外にない理由を痛感しました。まず現地での人脈も無く、オープンするまでに膨大な手間とコストがかかる。例えオープンしても、1、2店舗では食材や人材にかけられる予算が限られるためその質は下がり、PR予算も無いのでブランディングができない。これでは店舗展開なんてとても無理です。

「Japan Food Town」ではテナントが出店するにあたり必要なことをあらゆる面からサポートしました。過去にこれだけ細かくサポートしたプラットフォームは無かっただろうと胸を張って言えるくらい(笑)海外出店は日本での出店より10倍大変なところを、1.5倍~2倍程度で済むようにはしたつもりです。中にはこのモデルでしか出店したくないと言ってくれるテナントもいて、それは本当にやってよかったと思いました。

Q.
野菜、肉、魚などの日本産食材をできるだけ仕入れるという取組をされていますね。
吉川
日本には四季があり、日本食は「旬のものを、採れたその日のうちに食べる」というのが大前提の食文化です。だから日本ではコールドチェーンも発達した。一方で、輸送に時間がかかりコールドチェーンも発達していない多くの国では新鮮な日本産食材を安価に調達することが難しい状況です。私たちは今回、沖縄貨物ハブ(注3)を活用することで、全テナントが使う50%以上の食材を日本産にするべく取り組んでいますが、それは過去にはほぼ不可能と考えられていた数字なのです。

もう一つの挑戦は日本各地の素晴らしい食材を紹介していくこと。例えば沖縄県久米島産の車海老。日本なら高級レストランがこぞって使っていますが、シンガポールではほとんど食べられません。「Japan Food Town」では、天丼などで出す海老は全て久米島産の車海老です。このようにとても美味しいのに海外にあまり知られていない食材が日本には沢山ある、そういった食材をブランディングしてシンガポールへの販路を広げていく活動もしていきたいですね。

注3)沖縄貨物ハブ:全日空による那覇空港を拠点としたアジア主要都市への
   輸送路線。


Q.
「Japan Food Town」を今後、どのような場所にしていきたいですか。
吉川
オープン当初は現地のマーケットに合わせて適切にカスタマイズしたジャパンクオリティの日本食を提供すればお客様が来てくれるものと思っていました。しかしその後運営していく中で、料理や食材の特徴やストーリーを店頭で丁寧にお客様に「伝えること」も不可欠だと気づいたのです。そうすることで本物が本物として育っていく。元々欧米文化に近いシンガポールでは、お得意様として扱われ、スタッフとの距離が近い特別感をもった接客が喜ばれる。それは日本人が比較的苦手なポイントかもしれません。

そのため店舗スタッフの教育はとても大切。日本人スタッフのきめ細かさと、現地スタッフのコミュニケーション能力を合わせた、現地での目指すべき接客サービスを教育カリキュラムや認定制度にまとめ、それを各テナントと共有することで、「Japan Food Town」が人材教育のプラットフォームとしても役割を果たしていきたいと思っています。

「Japan Food Town」が5年10年20年続いていくため、まずはこういった差別化要因を時間かけて地道に積み上げていくことが重要です。将来的には、「Japan Food Town」を卒業したテナントの継続的な海外展開を支援する事業などに取組を拡大し、本物の日本食、日本文化をもっと世界に広めていきたいです。

※Japan Food Townホームページ(英語)はこちら

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